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くいどうらく
食道楽
村井 弦斎
冬の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 170,664 字 · 341 页
、その損害は一通りでありません。だから素人を山へ入るのはよほど高い代価を貰わなければ引合ないといいます。松茸ばかりでありません。東京の近傍では初茸が沢山採れてスープにでもすると味は大層好いものですが秋になって初茸を出そうとするには六月頃から松の落葉を掃かずにそのまま置いて藁を振り撒いておくと秋になって雨の降った後に大きな上等の初茸が沢山出ます。それを素人に取らせると根の土も一緒に引抜いてしまいますから再び其処へ出なくなります。馴たものは根の上からポクリと折り取るようにして根の先の土を動かさずにおきますからまた雨が降ると幾度でも出て幾度でも採れます。松露を採ってもその通りです。無経験の人は後の事を構わず、不親切に採りますから松茸でも初茸でもその土地がとんだ損害を受けます。後の事を考えずに一時に物を多く取りたがるのは人の品性の低い証拠で商人が一時の暴利を貪るため大切な得意先を一度で懲々させるのと同じようなものです」小山の妻君「なるほどそういう事もありましょうね。松茸は全体どういう土地にあるのがいいのでしょう」お登和嬢「松茸は赤土山で松の木が二十年位から四、五十年位過った処が多いとしてあります。