Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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だいにのせっぷん

第二の接吻

菊池 寛

Lesen Sie 第二の接吻 (だいにのせっぷん) von 菊池 寛 (きくちかん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 121.960 Zeichen · 247 Bildschirme

Aozora Bunko

五

それを書棚の真赤な表紙の本のページの間にはさむと、ようやく寝室へ来た。それを書くために、二時間近くもかかったのだが、倭文子はまだねむっていなかった。

「まだおやすみになれなかったの。」

「ええ、ちっともねむれないわ。」

「倭文子さん、何か煩悶がおありになるの。」

「いいえ。」

そういって、倭文子は、涙がほとばしりそうになる目の上に羽ぶとんをかけた。

「そう。初めての家だと、ねむれないものね。気を落ちつけておやすみなさいね。あした、きっと、いいことがあってよ。」

五

京子と倭文子との葉山の生活は、二日三日と続いた。倭文子の心の傷は、五月の太陽と海と風と、東京からの距離とのために、ようやく痛みが薄らぎ始めていた。

それに、彼女と村川との心の関係は突発的で短かった。彼女の恋心は、目ざまされたばかりにすぐたたき付けられていた。温柔な心はそれに堪え忍び、犬がその傷口をなめるように自分でそっといたわっていた。

だが、京子の心の傷は、いえなかった。いえなかったというよりも、自分でいやさなかった。彼女は、わざとその傷口を自分でひっかき廻し、その痛みを強くし、強くなった痛みの刺激で生きようとしていた。