Japanische Klassiker mit Furigana
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だいにのせっぷん
第二の接吻
菊池 寛
Lesen Sie 第二の接吻 (だいにのせっぷん) von 菊池 寛 (きくちかん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 121.960 Zeichen · 247 Bildschirme
彼女は、ちょっと振り返った。だが、それを幻聴だと思ったのだろう。立ち止まりもしないで、すぐ歩み去ろうとした。
「倭文子さん、倭文子さん!」
二度、つづけて呼んで村川は、倭文子に近づいた。倭文子は、ギョッとして立ち止まった。そして危く駆け出しそうな姿勢をとった。
「僕です。村川です。」
といって、彼は倭文子の前に立った。彼女は、恐怖からはやっと恢復したものの、「まあ!」と、かすかにいったまま、そこに蒼白になって立ちすくんでしまった。
「お散歩ですか。」
倭文子は、口がこわばったように返事をしなかった。
「びっくりなすったのですか。どうも、失礼しました。」
「いいえ。」
とかすかに答えたものの、彼女の顔になごやかな表情は浮んで来なかった。彼女はこうして、向い合っていることが、不安で仕方がないといったように、その夜目に黒い眸を落着きなく、動かしていた。何かの口実があれば、ここを去りたがっていることが露骨に見えた。
村川は、スッカリしょげてしまった。倭文子を呼び止めたこと、こうして向い合って立っていることが、苦痛になり出した。
「いい月ですね。」
彼は、お互の間の気まずい空気を払い除けようとしていった。