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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

02 こけ猿の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 241,861 字 · 480 页

青空文庫

「まア、待たれい! この話には落ちがあるようだ。文献によれば、三百万両積んだ和蘭船が、唐の海に沈んでおるそうじゃから、それを引きあげればなんでもないとか、なんとか――」

「さよう、一風宗匠のいうことなら、おおかたそこらが落ちでござろう」

と、もう一人が口をとがらし、

「城下のおんなどものかんざしを取りあげて、小判に打ち直せばいいなどとナ、うははははは、殿! かような危急な場合、たあいもない老人を相手に、いたずらに時を過ごさるるとは、その意を得ませぬ。早々御下山あってしかるべく存じまする」

「そうだ、そうだ、一風宗匠はおひとりで、夢の国にあそばせておくに限るて」

まるで博物館あつかい――耳が聞こえないから、宗匠、何を言われても平気です。

対馬守も、暗然として宗匠を見下ろしていたが、ややあって長嘆息。

「ああ、やはり年齢じゃ。シッカリしておられるようでも、もう耄碌しておらるる。詮ないことじゃ。ごめん」

一礼して土間へおりようとすると対馬守の裾を、ガッシとおさえたのは一風宗匠だ。

動かぬ舌をもどかしげに、恨むがごとく殿様を見上げておりましたが、すぐまた、筆に墨をなすって、