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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

02 こけ猿の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 241,861 字 · 480 页

青空文庫

五

前は、ちょっとした草原になっていて、多人数の斬りあいには、絶好の場処。

玄心斎、大八、門之丞の三人は、誰が言いだしたともなく、さっきコッソリ寮を抜け出て、この灌木のかげに身をひそめ、眼前の草原に人影のあらわれるのを、いまか今かと待っているのだ。

それというのが。

とめてもきかずに、若君源三郎が門之丞を案内にたて、駒をいそがせてあのお蓮さまの寮へ行き着いたのは、まだ宵の口であった。

まもなく……。

源三郎には馳走の膳がすえられ同時に、三人の供の者は、不安のこころを残しつつ、別室へさがって、これも夕餉の箸をとることになったが――。

その時、三人のいる控えの間の襖のそとに、峰丹波をはじめ二、三人の声で、容易ならぬひそひそ話。

「では、なにか事をかまえて、この向うの野原まで源三郎どのをおびきだし……」

「そうじゃ、多数をもって一人をかこみ、じゃまを入れずに斬り伏せるには、あの草原こそ究竟、足場はよし、味方は地理を心得ておるしのう――」

「雨後の月見にでもことよせて、お蓮の方にひきだしてもらうのじゃナ」

「なにしろ相手は、名にしおう伊賀の暴れン坊じゃで、おのおの方、手抜かりなく――」