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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

02 こけ猿の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 241,861 字 · 480 页

青空文庫

うるさいねえ

一

大岡様は、事務的です。

「いや、それはわかっております。して、このたびの御用というのは、どういう……?」

「例の壺の一件ですがナ」

と、愚楽老人、神屏風を作って伸びあがるとともに、御奉行の耳へ、何事かささやきはじめた。

うるさいねえ

一

「いかがいたしたものでござりましょう」

というのは、峰丹波がこのごろ、日に何度となく口にしている言葉なので……。

いまも、そう呟いたかれ丹波は、月光にほの白く浮かんでいるお蓮様の横顔を、じっとみつめて、

「不意をおそって斬るにしても、かの源三郎めに刃の立つ者は、当道場には一人も――」

「うるさいねえ」

と、お蓮は、ふっと月に顔をそむけて、吐き出すように、

「ほんとに、業が煮えるったら、ありゃアしない。弱虫ばっかりそろっていて――」

丹波の苦笑の顔を、月に浮かれる夜烏の啼き声が、かすめる。

「当方が弱いのではござりませぬ。先方が強いので」

「同じこっちゃあないか、ばかばかしい。あの葬式の日に、不知火銭を拾って乗りこんで来て、名乗りをあげた時だって、お前達はみんな、ぽかんと感心したように、眺めていただけで、手も足も出なかったじゃないか。