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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

02 こけ猿の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 241,861 字 · 480 页

青空文庫

二

「よしんば置きびきは悪いことにしても、何もおいらがするんじゃアねえ。みんな世間がさせるんだい」

「フン、容易ならねえことを吐かす小僧だな」

「だって、そうじゃアねえか。上を見りゃあ限りがねえ。大名や金持の家に生まれたってだけのことで、なんの働きもねえ野郎が、大威張りでかってな真似をしてやがる。下を見りゃあ……下はねえや。下は、あたいや、羅宇屋の作爺さんや、お美夜ちゃんがとまりだい。わるいこともしたくなろうじゃアねえか」

「作爺とは、何ものか」

「竜泉寺のとんがり長屋で、あたいの隣家にいる人だよ」

「お美夜と申すは?」

「作爺さんのむすめで、あたいの情婦だよ」

二

「情婦だと?」

さすがの左膳も、笑いだして、

「そのお美夜ちゃんてえのは、いくつだ?」

「あたいと同い年だよ。ううん、ひとつ下かも知れない」

「あきれけえった小僧だな」

「なぜ? 人間自然の道じゃアねえか」

今度は左膳、ニコリともしないで、

「おめえ、親アねえか」

ちょっと淋しそうに、くちびるを噛んだチョビ安は、すぐ横をむいて、はきだすように、

「自慢じゃアねえが、ねえや、そんなもの」

「といって、木の股から生まれたわけでもあるまい」