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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

02 こけ猿の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 241,861 字 · 480 页

青空文庫

四

骨を拾ってくれよ」

言ったかと思うと彼は、スラリ一刀をひきぬいて、左膳のほうへ歩みだした。

捨て身になるとおそろしいもの。

刀をまじえようとするよりも、まるで、このままスパリと斬ってくれとでもいうように、左膳の前へ進んで行く大之進。

何か相談事があって、話に出かけていくような態度だ。

これをむかえた左膳は、いささかかってがちがって、濡れ燕の斬っ尖ごしに、きっと大之進をみつめて無言。

大之進の一刀と、濡れ燕と、ふたつ斬っ尖のあいだがみるみるせばまって、チチチと二本の刃物のふれあうひびき……と! サッと二人は前後にわかれた。

相正眼――。

塀の上の見物人も、もう駄弁をろうするどころではない。

シーンと静まり返ったなかに、すぐそばを流れる三方子川の水音が淙々、また淙々……。

胴を打つ技は、姿勢がくずれやすい。

むずかしい業だ、胴は。

下腹の力をぬいてはならぬ。撃つ時には、十二分の力を剣にこめねばならぬ。背と腰を、竹のごとくまっすぐに伸ばしてうたねばならぬ。撃ったあとは、左の拳が腹の前方にあって、右腕と左腕とが交叉するように、手を返さねばならぬ。左手をひくこと、右面をうつ場合のごとし――。