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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

02 こけ猿の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 241,861 字 · 480 页

青空文庫

尚兵館

一

尚兵館

一

「なんじゃい、このざまはっ!」

奥庭の離室から、この、剣士の一隊の寝泊りしている屋敷内の道場、尚兵館へやってきて、真夜中ながら、こう大声にどなったのは、田丸主水正だ。

「まるで、魚河岸にまぐろが着いたようじゃないか」

主君柳生対馬守の御筆になる、「尚兵館」の三字の額が、正面の一段小高い座に、かかっている。

広い道場の板の間に、薄縁を敷きつめ、いちめんに蒲団を並べて寝ているのは、こけ猿の茶壺を奪還すべく、はるばる故郷柳生の郷から上京してきた高大之進の一隊、大垣七郎右衛門、寺門一馬、喜田川頼母、駒井甚三郎、井上近江、清水粂之介、ほか二十三名の一団――だったのが、左膳を相手のたびたびの乱刃に、二人、三人命をおとして、今は約二十人の侍が、こうしてこの林念寺前の柳生の上屋敷内、尚兵館という道場に寝泊りして、相変わらず、日夜壺の行方をさがしているのです。

今は真夜中……昼間の捜索につかれた一同は、蒲団をひッかぶって寝こんでいる。

いや、もう、南瓜をころがしたよう。

ひとの蒲団へ片足つっこんだり、となりの人の腹を枕にしたり、時計の針のようにぐるぐるまわって、ちょうどひと晩でもとの枕に頭がかえる……ナンテのはまだいいほうで。