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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

02 こけ猿の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 241,861 字 · 480 页

青空文庫

六

ふたりを斃し、いま三人めをねらって、大きく刀をかぶっていた源三郎は。

ぐっと手もとに、かすかな重みの加わったのを知ると同時に。

何かしら、かたなを背後へひかれるような気がした。

変なじゃまものに、刀をしばられた感じ――。

オヤ! と思いました。

それとともに、

いま水粒がぱらっと飛んで、刀もつ手から自分の首すじへかけて、かすかにとばっちりをうけたのを意識した。

丹波はそれなり壁ぎわへ飛びすさって、一刀を平青眼……。

じっと闇黒をすかして源三郎のようすを、見守っている。

刹那のしずかさ。

岩淵達之助、等々力十内、ほか大勢も。

呼吸をのみ、うごきを制しあって、くらい中に源三郎の立ち姿を見つめていますと。

源三郎、金縛りにあったようにそのままの姿勢です。

この得体の知れない出来ごとに眉をひそめ、小首を捻って、とっさの判断に苦しむようす。

無理もない……。

いまも柄を握る源三郎の両手に、何かは知らず、うす気味わるい冷たい液体が、ジクジクしたたり落ちている。

闇の中で見えませんから、このつめたい液体がなんだかひどく不吉なものに感じられて、これがとっさに、源三郎の心理におよぼす影響は、決して小さくありません。