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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

02 こけ猿の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 241,861 字 · 480 页

青空文庫

二

二

なんの因果で、こんな隻眼隻腕の痩せ浪人に……と、はたの眼にはうつるだろうが、お藤の身にとっては、三界一の殿御です。

恋しいと思う左膳と、こうしていっしょに暮らすことができるようになったのだから、お藤の喜びようったらありませんでした。

莫連者の大姐御でも、恋となれば生娘も同然。まるで人が変わったように、かいがいしく左膳の世話をする。何かぽっと、一人で顔をあからめることもあるのでした。

だが、左膳は木石――でもあるまいが、始終冷々たる態度をとって、まるで男友達と一つ屋根の下に起き伏している気持。左膳の眼には、お藤は女とはうつらないらしいので。

同居しているというだけのことで、淡々としてさながら水のよう……あの最初の晩、一つしかない寝床に、チョビ安とお藤が寝て、左膳は畳にごろ寝したのだったが、それからもずっと左膳は、そこを自分の寝場所とさだめて、毎晩手枕の夢をむすんでいる。

さめては、思案。

「どう考えても、ふしぎでならねえ。あんなに、眼をはなさずに、昼夜見まもってきた壺の中身が、いつの間にすりかえられたか――」

「父上、あたいにも、ちっともわからないよ。