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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

02 こけ猿の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 241,861 字 · 480 页

青空文庫

三

ところで、このたびの日光大修営、乱世に武をもって報ずるも、この文治の御代に黄金をもってお役にたつも、御恩返しのこころは同じこと。ましてや、流れも清き徳川の源、権現様の御廟をおつくろい申しあげるのですから、たとい、一藩はそのまま食うや食わずに枯れはてても、君の馬前に討死すると同じ武士の本望――」

「いや、見上げたお志じゃ。よくわかり申した」

来る使いも、来る使いも、この同じ文句を並べるので、主水正、聞きあきている。

「いえ、もうホンのすこし、使いの口上だけは、お聞きねがわないと、拙者の役表がたちませぬ――まことに、この日光おなおしこそは、願ってもない御恩報じの好機である。なんとかして自分方へ御用命にならぬものかと、それはいずれさまも同じ思いでございましたろうが、ことに主人将監などは、そのため、日夜神仏に祈願をこらしておりましたところ……」

主水正は、そっぽを向いて、

「何を言わるる。口はちょうほうなものだテ。祈願は祈願でも、なかみが違っておったでござろう。どうぞ、どうぞ日光があたりませぬように、とナ」

この言葉を消そうと、竹田なにがしは大声に、

「主人将監は、将軍家平素の御鴻恩に報ゆるはこの秋、なんとかして日光御下命の栄典に浴したいものじゃと、日夜神仏に祈願、ほんとでござる、水垢離までとってねがっておりましたにかかわら