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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
02 こけ猿の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 241,861 字 · 480 页
七
「丹下さま、こいつアいってえどうしたというんでげしょう。あっしが、あなた様をお迎いに飛び出した時と、おんなじ恰好だ。あれからずっとこのまんまとすると、二人とも、おっそろしく根気のいいもんでげすなア」
その与吉の声も、左膳の耳には入らないのか、かれは、蒼白な顔をひきつらせて、凝然と樹蔭に立っている。
ひしひしと迫る剣気を、その枯れ木のような細長い身体いっぱいに、しずかに呼吸して、左膳は、別人のようだ。
与吉とかれは、裏木戸の闇の溜まりに、身をひそめて、源三郎と丹波の姿を、じっと見つめているのである。
藍を水でうすめたような、ぼうっと明るい夜だ。物の影が黒く地に這って……耳を抉る静寂。
夏の晴夜は、更けるにしたがって露がしげって、下葉に溜まった水粒が、ポタリ! 草を打つ音が聞こえる――。
源三郎は、その腰をおろしている庭石の一部と、化したかのよう……ビクとも動かない。
白い鏡とも見える一刀を、青眼に取ったなり、峰丹波は、まるで大地から生えたように見える。斬っ尖ひとつうごかさず、立ったまま眠ってでもいるようだ。
二分、三分、五分……この状態はいつ果つべしともなく、続いていきそうである。