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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

02 こけ猿の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 241,861 字 · 480 页

青空文庫

四

四

思いきや、われ人ともに狂気のようにねらっているこけ猿の茶壺が、いつのまにかこの一味の手にはいって、今この部屋の、この戸棚のなかにしまってあろうとは!

源三郎は、眼をしばたたきました。と見こう見するまでもなく、古びた桐の木箱を鬱金の風呂敷につつんであるのは、まぎれもないこけ猿だ。

「ド、ド、どうしてこの壺がここに――?」

おめいた源三郎、走りよろうとした。

と、いちはやくお蓮さまの白い手が灯にひらめいて、この地ぶくろの戸をしめていた。

そして、はばむがごとく、うしろざまに手をひろげて、ピタリその前にすわったお蓮様。

「ほほほほほ、今になってそんなにびっくりなさるなんて、源さまもよっぽど暢気ですよ。なんとかいう一ぽん腕の浪人が、橋の下の乞食小屋に、後生大事に守っていたのを、丹波が人をやって、こっそり摸りかえさせたんです」

寸分違わない風呂敷と木箱をつくり、その箱の中には、破れ鍋一個と「ありがたく頂戴」と書いたあの一枚の紙片……左膳の小屋からほんものを盗みだし、かわりにこれを置いたのは、さては、峰丹波の仕業であったのか。

それとも知らず左膳は、あの高大之進の一党が斬り込んだ時、命を賭して破れ鍋をかかえて、走ったとは、左膳一代の不覚――お藤の家でチョビ安をおさえられて、それと交換に、おとなしく大之進方へ渡した箱