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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

02 こけ猿の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 241,861 字 · 480 页

青空文庫

四

と玄心斎が敷居際に手をついたとき、源三郎は、座敷の真ん中に、倒した脇息を枕にして――眠ってでもいるのか、答えは、ない。

「お会いになる用はないと存じまするが、いかが取りはからいましょう」

「う、うるせえなあ」

むっくり起きあがった源三郎、相変わらず、匕首のような、長い蒼白い顔に、もの言うたびに白い歯が、燭台の灯にちかちかする。

「ど、ど、どこへ来ておる」

「そこのお廊下までまいっております。強って御面会を得たいという口上で……」

「自分でまいったのか」

「はい、自身できておりますが」

ちっと考えた源三郎は、

「折れたのかも知れぬ。会おう」

起とうとするのを、玄心斎は静かにひきとめて、

「や、ちょっとお待ちを。あの峰丹波をだきこんでおりますことだけでも、かの女狐は、なかなかのしたたか者ということは知れまする。こうやってわれら一同、いま文句が出るか、きょうにも苦情をもちこんでまいるか、何か申して来たら、それを機会に、この道場をこちらの手に納めてやろうと、かく連日連夜したい三昧の乱暴を働いて、いわばこれでもか、これでもかと喧嘩を吹っかけておりますのに、きょうまでじっとこらえて、なんの音沙汰もなかったところは、いや、なかなかどうして、敵ながらさる者。