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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

02 こけ猿の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 241,861 字 · 480 页

青空文庫

五

丹下左膳のからだがフッと消えたのだ。

さながら、地殻が割れてそこへのまれ去ったかのように……。

じっさい、そのとおりなのだ。

今にも追いうちに、濡れつばめが飛んでくるかと覚悟をきめていた高大之進は、ウンともスンとも言わずに左膳が、穴の中へおちこんでしまったのだから、ホッとすると同時に、あっけない感じ。

ヤヤッ! と、駈けよって穴のふちをのぞく。

伊賀の同勢も、ふしぎな思いでいっぱいだ。

「こんなところに穴が……」

「穴の上に、この焼け板が渡してあったのだナ」

「これは初めから罠としてたくらんだものでござろう」

口ぐちにわめきながら、穴のふちへ走りよって下をうかがうと。

ちょうど人ひとりはいれるくらいの穴が、まっすぐに地底へのびていて、何やらうすら寒い風が、スーッと吹きあげてくる。

一同は狐につままれたようである。

顔を見あわせるばかりで、言葉もなかった。

チョビ安は夢中だった。伊賀ざむらいをおしのけて、穴の縁へ立ち現われたチョビ安、

「父上! 父上! かような卑怯なめにおあいなされて……」

穴のふちは、土がやわらかい。勢いこんだチョビ安の足に、土がくずれて、ド、ドウとこもった音とともに、土塊が穴のなかへ落ちこんでいく。