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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

02 こけ猿の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 241,861 字 · 480 页

青空文庫

五

「キ、来たな。では、久しぶりに血を浴びようか」

と言った、が、立とうともしない。

四、五間の間隔をおいて、丹波は、ピタリと歩をとめた。

「源三郎どの、斬られにまいりました」

「まあそう早くからあきらめることはない」

源三郎が笑って、石にかけたまま紺の法被の腕ぐみをした瞬間、

「では、ごめん……」

キラリ、丹波の手に、三尺ほどの白い細い光が立った。抜いたのだ。

五

あの与吉めが、あんなに泣いたり騒いだりして、取り戻そうとしたこの壺は、いったい何がはいっているのだろう……。

左膳は、河原の畳にあぐらをかいて、小首を捻った。

竹のさきに蝋燭を立てたのが、小石のあいだにさしてあって、ボンヤリ菰張りの小屋を照らしている。

きょうから仮りの父子となった左膳と、チョビ安――左膳にとっては、まるで世話女房が来たようなもので、このチョビ安、子供のくせにはなはだ器用で、御飯もたけば茶碗も洗う。

珍妙なさし向いで、夕飯をすますと、

「安公」

と左膳は、どこやら急に父親めいた声音で、

「この壺をあけて見ろ」

川べりにしゃがんで、ジャブジャブ箸を洗っていたチョビ安、

「あい。なんでも父――じゃなかった、父上の言うとおりにするよ。