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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

02 こけ猿の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 241,861 字 · 480 页

青空文庫

その足留稲荷のとんだ巧徳ででもあろうか。

伊賀の暴れン坊、柳生源三郎の婿入り道中は、いまだ八ツ山下の本陣、鶴岡市郎右衛門方に引っかかっているので。

こけ猿の茶壺は、今もって行方知れず。植木屋に化けてひとり本郷の道場へ潜入して行った主君、源三郎の帰るまでに、なんとかして壺を見つけ出そうと、安積玄心斎が躍起となって采配を振り、毎日、早朝から深夜まで、入り代わり立ちかわり、隊をつくってこの品川から、江戸の町じゅうへ散らばって、さがし歩いて来たのだが――。

一度は、佐竹右京太夫の横町で、あのつづみの与吉に出あったものの、みごとに抜けられてしまって……。

来る日も、くる日も、飽きずに照りつける江戸の夏だ。

若き殿、源三郎の腕は、みんな日本一と信じているから、ひとりで先方へ行っていても、だれも心配なんかしない。何しろ、血の気の多い若侍が、何十人となく、毎日毎晩、宿屋にゴロゴロしているんだから、いつまでたってもいっこう壺の埓があかないとなると、そろそろ退屈してきて、脛押し、腕相撲のうちはまだいいが、

「おいっ! まいれっ! ここで一丁稽古をつけてやろう」

「何をっ! こちらで申すことだ。