轻松读懂日语经典作品
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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
02 こけ猿の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 241,861 字 · 480 页
「ソレ、お羽織が通る……」
というんで、誰もこの愚楽老人のことを、まともに呼ぶ者はなかった。城外では、垢すり旗本、殿中では、この、お羽織お羽織で通ったものです。
眼引き、袖引き、ひそかに笑う者があったりすると、愚楽老人、
「御紋が見えぬか」
と、背中のこぶを突き出して、きめつけていく。
真青なお畳廊下。金の釘隠しがにぶく光って、杉の一枚戸に松を描いたのが、ズラリと並んでいる。これが有名な松の廊下……元禄の浅野事件の現場です。
お羽織がそこまでさがってきたとき、お坊主を案内に立てて、向うの角からまがってきた裃姿のりっぱな武士……象のような柔和な眼、下ぶくれの豊かな頬には、世の中と人間に対する深い理解と、経験の皺が刻まれ、鬚にすこし白いものがまじって、小肥りのにがみばしったさむらい。
愚楽老人とその侍が、ちょっと目礼をかわして、すれちがおうとしたとたん、不意に立ちどまった愚楽、
「や! これは奇怪な! なんでこのお羽織を踏まれた。いやさ、なんの遺恨ばしござって、このお羽織の裾を踏まれたか。それを聞こう、うけたまわろう!」
と、やにわに、くってかかりました。