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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

02 こけ猿の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 241,861 字 · 480 页

青空文庫

「先祖がしこたま溜めこんで――いかがです、すこし強すぎますか」

「いやよい心地じゃ。先祖と申せば、お前、あの柳生一刀流の……」

「へえ。うんとこさ金を作って、まさかの用に、どっかに隠してあるんですよ」

「そうか。そいつは危険じゃ。すっかり吐き出させねばならぬ。よいこと探ったの」

「地獄耳でさあ。じゃあ、伊賀に――」

「うむ、よきにはからえ」

と、おっしゃった。これで、大名たちが桑原桑原とハラハラしている来年の日光おなおしが、いよいよ柳生対馬守に落ちることにきまった。なんでも、よきにはからえ……これが命令だ。都合のいい言葉があったもので。はからえられたほうこそ災難です。

吉宗、最高政策中の最高政策、もっとも機密を要する政談は、いつも必ず、この愚楽老人ひとりを相手に、こうしてお風呂場で相談し、決定したのだ。

裸の八代将軍をゴシゴシやりながら、なんによらず、幕府最高の密議を練る愚楽老人――この、こどもみたいなお風呂番のまえには、大老も、若年寄もあたまがあがらない。

この千代田湯の怪人は、そもそも何もの?……垢すり旗下の名で隠然権勢を張る、非常な学者で、また人格者でした。