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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

02 こけ猿の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 241,861 字 · 480 页

青空文庫

二

「手に持っただけで、それだけのことがわかるとすれば、いよいよ貴様は、何者かの変名――」

「問答無益だ!」

一人がさけんだ。

「はじめから約束が違う以上、当方こそ約束どおりに、この娘を引っさらって行かねばならぬ」

と、いきなり、隅にふるえているお美夜ちゃんを横だきにかかえこんで、追いすがる作爺さんをしりめにかけ、そろって家を出ようとするとたん、ぬっと戸口をふさいで立ったのは、房々と肩にたらした合総、松の木のような腕っ節にぶらりとさげたのは、一升入りの貧乏徳利で……。

二

泣きさけぶお美夜ちゃんを片手にかかえた一人、それにつづく三人が、掌を合わせて追いすがる作爺さんを一喝して、その長屋を立ち出でようとしているところへ――。

ずいと土間へはいりこんできたのは、あの、風来坊の蒲生泰軒先生。

元来が風のような先生で、空の下、地の上ならば、どこでも自分の家と心得ているのですから、到るところへふらっと現われるのは、当然で。

いつでも、どこにでもいるのが泰軒居士……同時に、さア用があるとなると、どこを探してもいないのが、この泰軒先生なのだ。

いま、この通りかかった竜泉寺の横町で、長屋の前のただならない人だかりを見て、何事だろうとはいって来たのですが、