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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

02 こけ猿の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 241,861 字 · 480 页

青空文庫

「ソ、それはわかっております。おっしゃるまでもござりませぬが、時機を待とうというお心で、今までああして、ただ、一つ屋根の下にはりあって、いわば血のなき闘い……ともかく穏便にお忍びになって来られたものを、いまとなってにわかに――」

「馬鹿を言えっ!」

源三郎は、大八と玄心斎のあいだへ、つと馬首をつき入れながら、

「ドド道場では、人眼も多い。世間の騒ぎになろうを慮って、今まで一心に堪えてまいったのだワ。お蓮と丹波が、あれなる寮にまいっておるというからには、もっけの幸い――ゼ、絶好の機会ではないか! いつの日かまた……萩乃に血を見せぬだけでも、余の心は慰むぞ」

「しかし、峰丹波をはじめ、相当手強いところがそろっておりますとのこと」

「丹波――?」

上を向いて笑った源三郎の口へ、雨の条が、小さな槍のように光って飛びこむ。

「これじゃ!」

いきなり、ひょウッ! とふるった源三郎の鞭に、路傍の、雨を吸って重い芒が微塵に穂をみだれとばして、なびきたおれる。サッサと馬をすすめて、

「このとおりじゃ、丹波ごとき……いわんや、爾余のとりまきども――」

「おいっ!」

と大八が門之丞へ、