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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

02 こけ猿の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 241,861 字 · 480 页

青空文庫

「失望するでない。またの折りもあることじゃ」

一座は、ヒヤリと、肩をすぼめる。

「それにしても、だいぶ御馳走が出ておるのう」

みんな妙な顔をして、だれもなんともいわない。

「山吹色の砂糖菓子か。なるほど、それだけの菓子があったら、日光御用は、誰にでもつとまるじゃろうからの、余も安堵いたした」

「へへッ」

皮肉をのこして、そのままスッとお立ちです。諸侯連、控えの間へさがると現金なもので、

「伊達侯、首がすっと伸びたではないか」

「わっはっはっは、それはそうと柳生の御家老、御愁傷なことで」

みんな悔みをいいにくる。

「しかし、おかげでわれわれは助かった。柳生様々じゃ」

いろんな声にとりまかれながら、色蒼ざめて千代田城を退出した田丸主水正、駕籠の揺れも重くやがてたちかえったのは、そのころ、麻布本村町、林念寺前にあった柳生の上屋敷。

「お帰り――イ」

という若党儀作の声も、うつろに聞いて、ふかい思案に沈んでいた主水正、あわてふためいて用人部屋へ駈けあがるが早いか、

「おい、おいっ! だれかおらぬか。飛脚じゃ! お国おもてへ、急飛脚じゃ!」

折れよとばかり手をたたいて、破れ鐘のような声で叫んだ。