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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

02 こけ猿の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 241,861 字 · 480 页

青空文庫

ところが。

当の萩乃は、恋不知火のむすめ十九、京ちりめんのお振袖も、袂重い年ごろですなア。

「源三郎様なんて、馬が紋つきを着たような、みっともない男にきまってるわ」

ひどいことを考えている。

「おお嫌だ! 伊賀の山奥から、猿が一匹来ると思えばいい」

まだ品物を見ないうちから、身ぶるいするほど怖毛をふるっている。

すると……。

紺の香のにおう法被の上から、棕櫚縄を横ちょにむすんで、それへ鋏をさした植木屋の兄イ――見なれない職人が、四、五日前から、この不知火御殿といわれた壮麗な司馬の屋敷へはいって、さかんにチョキチョキやっていましたが。

「触るまいぞえ手を出しゃ痛い、伊賀の暴れン坊と栗のいが」

口の中で、いやに気になる鼻唄をうたっている。こいつが萩乃に、変に馴れなれしく口をきいているのを見て、怒ったのが師範代峰丹波だ。

短気丹波といわれた男……。

「植木屋風情が、この奥庭まで入りこむとは何事ッ! 誰に許しを得て――無礼者めがッ!」

発止! 投げた小柄を、植木屋、肘を楯に、ツーイと横にそらしてしまった。柳生流秘伝銀杏返しの一手……銀杏返しといったって、なまめかしいんじゃアない。