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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

02 こけ猿の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 241,861 字 · 480 页

青空文庫

考えてみると、あの門之丞がくさい。

途中から雨になって、引っ返そうとしたのを、先に立って、無理にここへ案内して来たのも、門之丞……いよいよ、怪しいのは門之丞だ。

ここは、向島を行きつくした、客人大権現の森蔭、お蓮さまの寮です。こんなところに、司馬家の別荘があろうとは、源三郎、知らなかった。ましてや今、お蓮様、丹波の一党、十五人ほどの腕達者が、ひそかにここへ来ていようとは! 近ごろ道場に姿の見えないことだけは、うすうす感づいていたけれども。

門之丞はいつのまにか敵と内通して、はじめから計画的に、若殿源三郎をこの窮地におとしいれたに相違ない。その門之丞は、さっき、しきりに源三郎に心を残す玄心斎、谷大八の二人とともに、どこか控えの間へ招じ去られたきり、なんの音沙汰もない。寮の内は、森閑として、

とっさに、これだけのきょう一日の追憶が、源三郎の脳裡を走ったのでした。

はかられたと知った源三、血走る声で、

「爺!、安積の爺! ダ、大八ッ――!」

叫んだ刹那です。

「筑紫の不知火は、闇黒にあって初めて光るのじゃっ!」

岩淵達之助の一刀が、右から躍って……。

二

岩淵の達ちゃん……なんて、心やすく言ってもらいますまい。