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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

02 こけ猿の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 241,861 字 · 480 页

青空文庫

「いや、これは伊賀の源三郎、あまりに野暮でござった。必ずともにあなたの女をお立て申すにつき、ササ、壺をこちらへ……」

「では、あの、わたしの言うことを――」

「うむ。きっと女を立てて進ぜるによって、早く壺を……」

恋は莫連者をも少女にする。頬に紅葉をちらしたお蓮様が、

「おだましになると、ききませんよ」

キュッと媚びをふくめて、源三郎を見上げながら、地袋の戸をあけて壺をとりだした瞬間! 腰をひねって抜きおとした源三郎の長剣、手に白い光が流れて、バサッ! 異様な音とともに畳を打ったのは、お蓮様の首……ではない。つややかな切り髪であった。

「これで女が立ち申した。あなたが女を立てるには、故先生の手前、この一途あるのみ、ハッハッハ」

源三郎の哄笑と同時に、壺の箱は、もはやかれの小わきに抱えられていた。

五

「もはや何刻であろうの?」

大刀を抱いて、草のなかにしゃがんだ安積玄心斎は、そういって、かたわらの谷大八をかえりみた。

「さア、月のかたむきぐあいで見ると――」

と、大八の首も、月のようにかたむいて、考えにおちた。

客人大権現の森蔭。

お蓮さまの寮とは、反対側のこの小藪のなかです。