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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

02 こけ猿の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 241,861 字 · 480 页

青空文庫

盛をやったあげく、みんなその場へへたばってしまって、イヤモウ、たたいても打っても眼をさますこっちゃアありません。

と、駕籠を飛ばして道場へ帰り着くが早いか、まず、ソッとこのほうをうかがって、このようすならめったに起きる心配はない。大丈夫と見きわめをつけた門之丞。

それからすぐ、萩乃のいる奥棟へしのびこんで、長い廊下を泥棒猫よろしく、かねてここぞと当たりをつけてある萩乃の寝部屋の前。

この夜ふけに、室内にはボーッと灯りがにじんでいます。呼吸をこらして、障子のそとに立っていると、

「源さま、源三郎様……」

耐え入るような、萩乃の声だ。わが主君ながら、男冥利につきた源三郎! と思うと、嫉妬にわれを忘れた門之丞、ガラリ障子を引きあけ、

「いや、おどろかないでください、萩乃さま。私です、門之丞です――」

ズイとはいりこみました。

四

「あらっ!」

萩乃は、突かれたようにのけぞって、闇黒をせおってはいってきた男を、見あげた。

門之丞などという名は、彼女は知らない。が、見れば、源三郎にくっついて伊賀から来ている青年剣士の一人。しかも、源三郎の右の腕のように、先にたって道場で乱暴を働いている男だから、これは萩乃、おどろくななんて言われたって、おどろかずにはいられない。