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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

02 こけ猿の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 241,861 字 · 480 页

青空文庫

あたいのお母どこにいる

じれったいぞエお地蔵さま

石が口ききゃ木の葉が沈む――」

「あらっ、だめ! ちがうわよ、ちがうわよ。それじゃアまるででたらめの文句だわ。いやな泰軒小父ちゃん! ほほほほほ」

「イヤ、こりゃア失敗った。またしくじったかの」

秩父の郷士の出で、豊臣の流れをくんでいるところから、徳川の世を白眼ににらんでいる巷の侠豪、蒲生泰軒居士。

肩をなでる合総、顔を埋める鬚と胸毛を、風になぶらせて、相変わらず、ガッシリしたからだを包むのは、若布のようにぼろのさがった素袷に、縄の帯です。たいていの貧乏にはおどろかない、トンガリ長屋の住人ですが、この泰軒の風体にだけは、上には上があるとホトホト感心している。

ひやめし草履をひきずる先生の横に、ちょこちょこ走りのお美夜ちゃん……稚児輪の似あうかわいい顔で両袖かさねて大事そうに、胸のところにだいているのは、泰軒小父ちゃんの一升徳利で。

この奇妙な取り合わせの二人づれが、トンガリ路地へかかると、待っていた一同、ていねいにおじぎをして、あとからゾロゾロ、うやうやしくついてはいる。いやモウ、たいへんな尊敬……。

三

「先生、うちの娘っこに、このごろ悪い虫がつきやしてナ、どうも心配でならねえのですが――」