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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
02 こけ猿の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 241,861 字 · 480 页
これをさしてファッショなどという伊太利あたりの借り物などと思うのは、大たわけだ。
さて。
それがいいが……。
たましいの澄みわたる杉木立ち、淙々千万年の流れをうたう五十鈴川の水音に、心を洗った若い日の泰軒先生は、根が無邪気な人ですから、日本を思い、おそれ多いことですが皇室をしのびまつって、すっかり嬉しくなっちゃったんですネ。
連日連夜、山田の木賃宿にがんばって、ひとりで祝盃をあげた。
そこまではいいとして。
そいつをちっとばかりあげすぎたんです。
その当時から、かたときもはなさない貧乏徳利を振りまわして、フラフラ山田の町中を威張ってあるいた。イヤ、山田の町の人が、おどろきましたね。何しろ、容貌魁偉、異様な酔っぱらいが、愉快だ愉快だと、毎日町じゅうをねって歩くんですから。
とどのつまり、交叉点か何かに大の字なりに寝こんでるところを泰軒先生、通行妨害というんで山田署へひっぱられちゃった。
司法主任の方がとりしらべると、乞食のような風体だが、言うことがおそろしく大きい。
奇抜なルンペン……ただの鼠じゃあるまいとなって、このとき、みずから泰軒を訊問したのが、当時、この伊勢山田のお奉行様だった大岡忠相でした。