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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

02 こけ猿の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 241,861 字 · 480 页

青空文庫

人物を知るには人物を要す。大岡様を通じてだいぶ前から相識になっているこの蒲生泰軒を、愚楽は、学問なら、腹なら、まず当今第一の大人物とみて、こころの底から泰軒に絶大な尊敬を払っているんです。

お城には、話せるやつなんか一人もいないが、いまこの日本で、自分が膝をまじえて語るに足る人物はといえば、まず、南の奉行大岡越前と、この、街の小父さん蒲生泰軒と、いずれも、兄たりがたく弟たりがたし……この二人よりないと、愚楽老人ひそかに思っている。

大岡様は、大岡さまで。

世の中にはいろんな人がいるが、衷心から尊敬に値して、なんでも秘密をうちあけて智恵を借りる畏友は、風来坊泰軒居士と、この湯殿のラスプチン愚楽老人以外にはない――こう考えている。ラスプチンというと、なんだか愚楽も、ひどくエロごのみでいんちき宗教をあやつるように聞こえますが、わが愚楽、そんなところはちっともないんです。ただ、常人のうかがい知ることのできないお城の奥深く、一種の妖気ともいうべきふしぎな威勢、魅力、呪縛力をそなえている点で、たとえてみれば、お湯殿のラスプチン……

泰軒先生も。

今の世でいくらか話せるやつは、大岡とこのせむしの化け物――どっちも葵の扶持をいただく飼い犬だけれど、まアこの二人は、相当なもんだ……ぐらいに思ってる。