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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

02 こけ猿の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 241,861 字 · 480 页

青空文庫

「ハテ、さようなところに司馬家の寮があったのか。してみると、源三郎はもはや亡きものと、かの門之丞とやらが萩乃に言った口裏でも、その寮とやらにでもヒョンなからくりがあったのかも知れぬ。その家が今また出火とは、はてナ合点のゆかぬ……」

胸に問い、胸に答えて。

ひとり不安な気もちに浪だつ。

ふたたび、壺のほうはお留守です。

と、そのやさき、

「オウッ、父上ッ! てえへんだ、てえへんだ!」

うらの井戸ばたで顔を洗っていたチョビ安が、濡れ手ぬぐいを振りまわして駈けこんできた。

「この裏の担ぎ煙草の富さんネ、渋江のほうに親類があって、ゆうべそっちへとまったところが、今朝の火事なんですと。まろうど大権現の森ン中の、不知火流の寮だそうですよ。侍が一人焼け死んだそうで、それがあの伊賀の暴れン坊柳生源三郎てえ人だとさ。イヤモウたいそうな評判だと、いま富さんが飛んでけえってきて話していましたよ、父上」

「ゲッ、何イ?」

左膳は腰を浮かして、

「伊賀の源三が焼け死んだと?」

「ウン。富さんはくすぶる煙の中から、その死骸をかつぎ出すところを見たんだとサ」

「ちえェッ、惜しいことをしたなア」