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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

02 こけ猿の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 241,861 字 · 480 页

青空文庫

五

竹田は、そのまま帰るかと思うと、

「いや、ここまでは使いの表」

と、ちょっと座を崩して、低声に、

「ときに――例のこけ猿は、みつかりましたかな?」

おどろいたことに、こけ猿の一件はモウだいぶ有名になってるとみえる。

五

「例のこけ猿の茶壺は、もはや見つかりましたか」

と竹田がきいた。こけ猿事件がこんなに有名になっているとは、おどろいたものだが、それよりも、もっとおどろいたことには……。

きかれた田丸主水正。

さぞかし大いにあわてるだろうと思いのほか。

この時主水正、すこしもさわがず、すまして手をたたいたものです。

「品川の泊りにて、若君源三郎様が紛失なされたこけ猿の茶壺、ちかごろやっと当家の手に返り申した。ただいまお眼にかけるでござろう」

「お召しでございましたか」

十六、七の小姓が、はるかつぎの間へきて、手をついた。

「ウム。こけ猿をこれへ」

「はっ」

お小姓は顔をうつ向けたまま、かしこまって出ていった。

柳生では、こけ猿の茶壺という名器が行方不明のために、その壺の中に封じこめてある先祖の埋宝個処がわからず、日光お着手の日を目前に控えて、ほとほと困却の末、藩一統、上下をあげて今はもう狂犬みたいに逆上している――という、目下、大名仲間のもっぱらの噂である。