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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

02 こけ猿の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 241,861 字 · 480 页

青空文庫

二

たのしみにしていたその相手が、むざむざ卑怯な罠にかかって、焼け死んだと知った左膳の落胆、その悲しみ……。

同時にそれは、自分から、ただ一つの生き甲斐をうばった峰丹波一味への、焔のような怒りとなって、左膳の全身をつつんだのだった。

「畜生ッ!――星の流れる夜に、いま一度逢おうと刀を引いて、別れたきりだったが……」

と左膳、焼け跡に立って、悵然と腰なる大刀の柄をたたいた。

「やい、大進坊、お前もさぞ力をおとしたろうなア」

「アイ、おいらもこんなに力をおとしたことはねえ」

まるで刀が口をきいたように、そばからチョビ安が、こう言った、そのことばに、左膳ははじめてわれに返ったように、

「安、丹波の一党は、どこかこの近くにひそんでいるに相違ねえ。これからお藤の家へ帰って、壺の中身をあらためたが最後、旅に出なくちゃアならねえからだだ。そうすれあ二月、三月、埋宝の場処によっては二年、三年、江戸に別れをつげなくちゃあならねえ。発足前にとっくりと、源三郎の生死をたしかめてえものだが――」

「うむ。そんならねえ、父、あすの朝までこの辺をウロウロして、それとなくあたってみようじゃあねえか」