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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

02 こけ猿の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 241,861 字 · 480 页

青空文庫

三

三

地上ではどんなにさわいでいるか知れない……。

耳を澄ましても、この深さではなんの物音も聞こえないのだ。

チョビ安はどうしたろう。

自分がこの穴へおちるところを彼は見ているのだから、きっとなんらかの方法を講じて、助けにくるに相違ない――と、左膳はそう思う一方、しかし、子供ではどうしようもあるまいし、それに、伊賀の連中につかまりでもしては、チョビ安、手も足も出まい。

闇になれてくると、その穴蔵のさまが、ぼんやりと眼にうつる。

上から細い穴を斜めに掘ってきて、ここだけ部屋のように掘りひろげたものとみえる。四方は粘土まじりのしめった土。地中に特有のヒヤリとした空気がおどんで……床をうつ水の音が、耳いっぱいに断続して聞こえる。

左膳は思いだしたように、源三郎へ、

「こけ猿の茶壺が二つあるはずはねえ。おれが手に入れて、駒形のある女のところに隠してあるのだから、お前がここで、お蓮からとりあげたというのは、偽の壺にきまってらアな」

源三郎は沈思の底から、太いまゆをあげて、

「余はあけて見たわけではない。貴公もその壺を、まだひらいたのではないのだろう」

「ウム、今もいうとおり、あけかけたところで、この火事だ。