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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

02 こけ猿の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 241,861 字 · 480 页

青空文庫

「こうしていてもはじまらぬ――」

そう言って源三郎も、身を起こした時。

天井からしたたる水粒は、早くなって、点々、点々と土をうつ。

うすくらがりの中を手探りで、その小部屋の隅へ行ってみると、上に小さな穴があいているらしく、そこから落ちる水が、じっとりと足下をぬらしている。

「この真上は?」

源三郎の問いに、左膳は静かに方向を考えて、

「三方子川の川底らしい」

「こりゃいかん! 頭の上を川が流れておるのか」

二人は、同時にうめいた。

四

ギョッ! として、顔をあげた二人。

左膳と源三郎の間に、天井からのしたたりは、ポタリ、ポタリとつづく。

その水滴の脚が、刻一刻早くなる。

「ウム、これは案外、深いたくらみがあるとみえるぞ」

歯ぎしりかむ源三郎の顔を、左膳は闇をすかして、じっと左眼にみつめた。

「落ちてきた穴を這いあがることはできぬし……」

水のしたたりは、二人の立っている土を濡らす。

小さなぬかるみが、だんだんひろがってゆく。

左膳はしゃがんで、左手を椀のようにへこませて、落ちてくる水を受けてみた。

トントンとやつぎばやに、掌を打つ水の粒。

「三方子川の川水であろうか」