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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

02 こけ猿の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 241,861 字 · 480 页

青空文庫

九

「妙なやつだ」

つぶやきながら、倒れている丹波のそばへ行って、

「カカカ借りるぞ」

と、その握っている刀をもぎとり、さっと振りこころみながら、

「植木屋剣法――うふふふふふ」

と笑った。

変わった構えだ。片手に刀をダラリとさげ、斬っさきが地を撫でんばかり……足を八の字のひらき、体をすこしく及び腰にまげて、若い豹のように気をつめて左膳を狙うようす。

一気に!――と源三郎、機を求めて、ジリ、ジリ! 左へ左へと、まわってくる。

濡れ燕の豪刀を、かた手大上段に振りかぶった丹下左膳、刀痕の影を見せて、ニッと微笑った。

「これが柳生の若殿か。ヘッ、青臭え、青臭え……」

夜風が、竹のような左膳の痩せ脛に絡む。

九

「おウ、たいへんだ! 鮪があがった。手を貸してくんねえ」

飛びこんできた与吉の大声に、道場の大部屋に床を敷きならべて、がやがや騒いでいた不知火流の内弟子一同、とび起きた。

「与吉とか申す町人ではないか。なんだ、この夜ふけに」

「まぐろが、なんとしたと? 寝ぼけたナ、貴様」

口々にどなられて、与吉はけんめいに両手を振り、

「イエ、丹波様が、お裏庭で、鮪のようにぶっ倒れておしまいなすったから、皆さんのお手を拝借してえんで」