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つたかずらきそのかけはし

蔦葛木曽棧

国枝 史郎

「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页

青空文庫

右門は嬉しそうに声をはずませ、「父上のお許しが出ましたからは遠慮なく門内へお入りなされ」

声につづいて一同の者は慎んで門内へ入って来た。

「如来衛門殿、ではしばらくここでお待ちを願います――拙者は至急奥へ参って館に取っての一大事を父上の耳へ入れ申すほどに」

「へいへいどうぞ右門様。ここに控えておりますほどに、早うお奥へおいでなされませ」

「ご免」と右門は声を残して姿を奥へ消してしまった。

邸内は寂として静かである。薄月の夜を縫うようにして桜が時々散って来る。

如来衛門と乾児の者はじっと地面に蹲まり咳一つしなかった。こうして時が経って行く。

その時ツカツカと若侍が奥の方から現われたが、

「如来衛門殿おいでなさるかな!」

「如来衛門はこの私で」

「さようでござるか。ではこちらへ」

「奥へ通るんでございますか?」如来衛門は恐縮して、「私はほんの町人の身分、執事様のお座敷へ上れるような、そんな者ではございません――お庭先から参りましょう」

「いやいやそういう遠慮はいらぬ。座敷へ上げよとのお言葉じゃ。構わずズンズン上がるがよい」

「さようなら仰せに従いまして」如来衛門は腰をかがめ、恐る恐る奥へ通って行く。