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つたかずらきそのかけはし

蔦葛木曽棧

国枝 史郎

「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页

青空文庫

彼はお吉の屍を手早く木の上へ担ぎ上げたがこれは餌に饑えた狼の餌食になることを恐れたからであった。

雨は益※(二の字点、1-2-22)降りしきり、一時絶えていた嵐さえ加わり、全山悉く暴風雨となった中を、紋十郎は裾をからげ韋駄天のように走り出した。硫黄ヶ滝へ向かうのである。

危難を遁がれた島君は険しい峠を上へ上へと力の続く限り駈け上がった。しかし十町と登らぬうちに彼女の力は尽き果てた。

岩の上へ腰を掛け一息入れて休んだがその間も心は焦々した。

「こうして休んではいられない。一刻も早く追い付いて紋十郎めの悪企みを右衛門さんに話さねばならぬ」

でまた彼女は立ち上がり足に委せて駈け出したが、今度は三町とは登らぬ中に彼女の精根は尽きてしまった。道の傍の芝草の上へがっくり体を横仆しにして彼女はハッハッと息を吐いた。

お吉を相手に命懸けの恐ろしい争いをしたことが彼女を疲れさせたのであった。手の節々足の節々が一度に劇しく痛み出した。そうして一番恐ろしいことには彼女は次第に眠くなった。

「眠ってはいけない眠ってはいけない。眠っていられる時ではない。右衛門さんが殺される! 右衛門さんが殺される! さあ早く起きて駈けなければならない!」