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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页
三度響く貝の音
三度響く貝の音
「あッ、しまった見付けられた!」
二人はピタリと足を止め元来た方を振り返って見た。不思議やそれらしい気勢もない。陣屋陣屋は静まり返り松火らしい火花さえ見えぬ。
「変梃だなア」と呟いたとたん、行手の林の木の間から、二点、十点、二十点、三十点ばかりの松火の光が、雪を桃色に染めながら一列にタラタラと現われた。
「南無三宝! 先廻りをされた!」
二人は茫然と佇んだままどうすることも出来なかった。するとその時一人の武者が静かにこっちへ近寄って来たが、
「お使者、どこへ参られるな」嘲笑うように声を掛けた。
「拙者をお忘れではござるまい」
松火を背にして髭を生やし武具に身を固めた大男。人丸にもお銀にも見覚えがある。
「やあ貴様は峠道で我らを襲った追剥ぎだな」
「よくもあの時は仲間の者を数人ならず殺したな。今日は仲間の敵討ち、遁がしはせぬぞ観念しろ!」鎌髭の権は嘲笑ったが、「それにしても汝ら二人、あの時のみすぼらしい駈落ち者が、木曽家の使者とは化けも化けたり、それが知れぬと思っていたのは日本一の大白痴、今になって逃げようとも、滅多に逃がす事ではないぞ」
「何を吐す!」