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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页
美麻奈姫
領主の腕力は強かった。鳰鳥は寝部屋へ引きずり込まれた。
美麻奈姫
「何をなさいます! お放しなさりませ!」
鳰鳥は怒り且つ驚き、こう思わず悲鳴を上げた。
しかし好色の大物主は、容易に放そうとはしなかった。ギラギラ輝く眼の中には、淫蕩の気が充ち充ちている。美食と運動との賜物によって、彼の腕力は強かった。いかに鳰鳥が女丈夫でも、力の競争では勝てそうもなく、ジリジリと寝台の方へ引っ張られて行った。
その寝台には獣の皮があたたかそうに掛かっている。彼女がそこへ押し伏せられたら、彼女の処女性は穢されるであろう。その瑞々しく滑らかな肌は、男の汗で濡れなければならない。珊瑚を砕いて塗り付けたような、あの紅の唇も、男の唾で穢されなければならない。
大物主の腕力は、いよいよ力を強めて来た。手近のところに歓楽がある! いや歓楽は手中にある! 現在歓楽を握っている! 荒淫無惨の大物主は、全身火のように燃えていた。
泣こうが喚こうが鳰鳥は、遁がれることは出来そうもなかった。侍臣はニヤニヤ笑いながら、部屋の隅で眺めていた。たとえ助けを呼んだところで、誰一人助けには来ないだろう。