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つたかずらきそのかけはし

蔦葛木曽棧

国枝 史郎

「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页

青空文庫

その中央に白馬に跨り、悠々然として打たせて行くのが、酋長荒玉梟帥であった。雄風辺りを払うばかり、まことに堂々と立派であったが、やはり扮装からいう時は、あまり綺麗だとは云われなかった。甲は確かに戴いていた。しかも鍬形の甲であった。だが一方の鍬形が、真ん中どころから折れていた。鎧もまさしく着けていた。しかし草摺りは千切れていた。鎧直垂も着ているが、あちこちを鼠に喰われていた。籠手脛当てもあててはいたが、古び穢れ錆びていた。手に持ったは槍であったが、さすがにこればかりは磨ぎ澄まされ皎々として輝いていた。後から五十人の後衛隊が、同じみすぼらしい風態で、護衛するように従いて来た。

三百五十人の一隊は、嫁迎いの行列なのであった。何という業々しい嫁迎いだろう! だがこれには理由があった。つまり瞞し討ちを恐れたからである。彼ら山上の麗人族は、信頼されない人種なのであった。譎詐、権謀、巧言、令色、こういうことは彼らにとって、朝飯前の仕事であった。うかうか暢気に乗り込もうものなら、ワナに掛けられないものでもない。そこで戦争を覚悟して、彼らは出立したのであった。

一匹の火竜が天上するように、彼らは断崖をよじ登った。