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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
02 こけ猿の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 241,861 字 · 480 页
なにしろ、あの絢爛をきわめた美術建築が、雨ざらしになっているのだから、ちょうど二十年もたてば、保存の上からも、修理の必要があったのだろうが、それよりも、元来、徳川の威を示し、庶民を圧伏するのが目的で建てられた、あの壮麗眼をうばう大祖廟だから、この二十年目ごとの修営も、葵の風に草もなびけとばかり、費用お構いなし、必要以上に金をかけて、大々的にやったもので。
もっとも、幕府が自分でやるんではない。
諸侯の一人をお作事奉行に命じて、造営費いっさいを出させるんです。人の金だから、この二十年目のお修復にはじゃんじゃんつかわせた。
これにはまた、徳川としては、ほかに意味があったので――。
天下を平定して、八世を経てはいるが、外様の大大名が辺国に蟠踞している。外様とのみいわず、諸侯はみな、その地方では絶大の権力を有し、人物才幹、一癖も二癖もあるのが、すくなくない。
謀叛のこころなどはないにしても、二代三代のうちに自然に金が溜まって、それを軍資にまわすことができるとなれば、ナニ、徳川も昔はじぶんと同格……という考えを起こして、ふと、反逆心が兆さぬでもない。
それを防ぐために、二十年目ごとに、富を擁しているらしい藩を順に指名して、この日光山大修復のことに当たらせ、そのつもった金を吐きださせようという魂胆であった。