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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
02 こけ猿の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 241,861 字 · 480 页
こちらへ壺を入手し、その壺中の書き物によって、埋宝をさがしだし、日光御修営に必要なだけを柳生に下げ戻しまして、あとはお城のお金蔵へ納めましたならば、八方よきように鎮まりますことと存じますが」
下を向いて言う愚楽の声……これは、隠密などが使った一種の含み声で、口の中で小声を発するのだけれども、奇妙に一直線に走って、数間離れた相手にまで、はっきり聞こえる。そして、それ以上遠いところや、部屋の外へなどは、絶対に洩れることのないという、独特の発音法です。
吉宗は、もうその話は倦きたといったように、
「名案じゃ、よきにはからえ」
つぶやくようにいったきり、だまりこんでしまった。
お納戸役が御膳部へ、朝飯のお風味に出かけていったのち、毒味がすんで、お膳を受け取ってお次の間まで運んでまいります。二、三人のお子供小姓やお坊主が、それを引きついで、将軍の御前へすすめる。
入れちがいに、一礼して立ちあがった愚楽老人は、人形がお風呂敷をかぶったような恰好で、御拝領羽織をだぶだぶさせながら、大奥から、お鈴の間のお畳廊下へ出ていきました。
なんとも珍妙な風態だけれど、いつものことだから、行き交う奥女中、茶坊主、お傍御用の侍たちも、さわらぬ神に祟りなしと、知らん顔。