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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
02 こけ猿の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 241,861 字 · 480 页
三
三
越前守と、官を賜っていても、多く、旗本などがお役付きになるのですから、殿中における町奉行の位置なんてものは、低いものだった。
今……南町奉行大岡越前守忠相、踏みもしない羽織の裾を踏んだと、愚楽老人に言いがかりをつけられて、そのふくよかな顔に困じはてた色を見せ、
「いや、これはとんでもない粗相を――平に御容赦にあずかりたい」
弁解はいたしません。踏みもしないのに、しきりにあやまっている。
上様以外、お城に怖いもののない愚楽老人は、ますます亀背の肩をいからせて、つめよりながら、
「そういえば、貴殿は大岡殿であったな。不浄役人に、この羽織をけがされたとあっては、愚楽、めったに引きさがるわけにはゆき申さぬ」
かさにかかっての無理難題……忠相を案内して来たお坊主は、かかりあいになるのを恐れて、おろおろして逃げてしまう。
愚楽の声が高いから、人々は何事かと、眼をそばだてていくのです。
松のお廊下は、千代田城中での主要な交通路の一つ。
書類をかかえて、足ばやに通りすぎるのは、御書院番の若侍。
文箱をささげ、擦り足を早めて来るのは、奥と表の連絡係、お納戸役付きの御用人でしょう。