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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

02 こけ猿の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 241,861 字 · 480 页

青空文庫

開けてくやしき

一

作爺さん、えらいことになってしまった――。

「なにを言やアがる。あの作爺さんにかぎって、そんなことのあるはずのもんじゃあねえ。でえいち乗りこんで来ている侍達が、おれの眼じゃあ、八町堀じゃあねえとにらんだ」

「それにしても、まっぴるま長屋へ押しこんで来て、ああやって爺さんを脅かしつけているからにゃア、お役筋の絡んでいる者に相違ねえ」

「いや、待て。わからねえぞ。なんだか知らねえが、預かっている物を出せとか言って、大声をあげているぜ」

とんがり長屋の入口は、わいわいいう人集り……。

残ったにしては根強い暑さかな――洒落たことを言ったもので、まったく、江戸の残暑ときちゃア、読んで字のごとく残った暑さにしては、根が深い。

いつまでも、つづく、

今日も朝から、赭銅色の太陽がカッと照りつけて、人の心を吸いこみそうな青空――。

街には、一面に土陽炎がもえて、さなきだにごみごみしたとんがり長屋のあたりは、脂汗のにじむ暑さです。

その汗を、額いっぱいに浮きださせて、

「いやいや、その方の宅に、こけ猿の茶壺をかくしてあることを、突きとめてまいったのじゃ」

わめきたっている侍がある。