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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

02 こけ猿の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 241,861 字 · 480 页

青空文庫

寝挫きでもされたか」

「ウーム、よくぞお聞きくだされた。実は、お恥ずかしき次第ながら、首が曲がらぬ、借金でナ」

中には、

「もうこれで一月、米の飯というものを拝んだことはござらぬ。米の形を忘れ申した。あれは、長いものでござったかな? それとも、丸い物――」

「これこれ、米の噂をしてくださるな。茶腹が鳴るワ」

「森越中殿、其許は御裕福でござろう、塩という財源をひかえておらるるからナ」

「御冗談でしょう。こう不況では、シオがない」

赤穂の、殿様、洒落をとばした。ドッ! と湧くわらい。これだけのユーモアでも、元禄の赤穂の殿様にあったら、泉岳寺は名所ならず、浪花節は種に困ったろう。

お廊下に当たって、お茶坊主の声。

「南部美濃守様、お上り――イッ!」

むし歯やみのような沈痛な顔で、美濃守がはいってくる。

四方八方から、声がとんで、

「南部侯、どうも日光は貴殿らしいぞ。北国随一の大藩じゃからのー」

「よしてくれ」

と南部さま、御機嫌がわるい。

「城の屋根が洩って蓑を着て寝る始末じゃ。大藩などとは、人聞きがわるい」

きょうは、すべていうことが逆だ。

「何を言わるる。鉄瓶と馬でしこたまもうけておきながら……」