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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

02 こけ猿の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 241,861 字 · 480 页

青空文庫

三

お藤がその前で、包みをとくと、出てきたのは、女の子の着る派手な衣装いっさいと、かわいい桃割れのかつら。

「芸があるんだよ、あたしにゃアね。めったに人に見せられない芸だけれど、壺を探しかたがた、その芸を売り物に、安公と二人、門付けをしてみようじゃアないか」

「いやだい、あたい、女の子に化けたりするのは」

その衣装を見て、チョビ安は口をとがらしたが、すぐ思い返したように、

「でも、そうやって江戸中を歩いていりゃあ、壺も壺だけれど、父や母に逢えるかもしれないね」

としんみり……。

三

「まあ、かわいい女の子だこと! 鳥追いじゃあなし、なんでしょうね」

「虫踊りなんですよ。虫踊りのお藤さんと、お安ちゃんですよ」

「虫踊り? 虫踊りとはなんでえ」

「オヤ、お前さんもずいぶん迂濶だねえ。いや江戸じゅうで評判の、尺取り踊りを知らないのかえ」

ぱっと晴れあがった日和です。町角に、近所の人達がひとかたまりになって、ワイワイ話しあっている。

本郷は妻恋坂の坂下、通りのはるか向うから、粋な音じめの三味線の音が流れて来て、大小二人の女の影が、ソロリソロリと、こっちへ近づいてくるのが見える。