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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
02 こけ猿の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 241,861 字 · 480 页
四
なんでもお蓮と丹波は、この先の渋江村とやらにまいっておるとのこと」
門之丞は言葉をくぎって、じっと源三郎の顔色をうかがった。
玄心斎と大八は、門之丞め、悪い時につまらないことを言いだしたと、にがりきって黙っている。
思い合わせてみると、きょうこの向島方面へ遠乗りにでかけようと言いだしたのも、この門之丞。それから、制止する玄心斎を無視して、それとなく巧みにここまで源三郎をみちびいてきたのも、門之丞。
四
仰向いて笑った門之丞の顔に、大粒の雨が……。
「彼奴ら、われわれとの根くらべに負け、押し出されるがごとく一時道場をあけて、かような片田舎へ逃げこんだものに相違ござらぬが、もとより、対策がたちしだい、いついかなる謀計をもって道場へ引っ返してまいるやもはかりしれませぬ。今ごろは、かの女狐と男狐、知る人もなしと額をあつめて、謀の真最中でござろう。そこへ乗りこんで、驚く顔を見てやるのも一興……」
そそのかすような門之丞の言葉に、思慮の深い玄心斎は眉をひそめ、
「門之丞は、どうしてさようなことを存じておるのかな。同じ屋敷内にあっても往き来もせぬ、いわば敵方の動静……それは、わしも、丹波とお蓮様がちかごろ道場におらぬらしいことは、聞き知っておったが、この近くの寮に出向いておるなどとは、夢にも知らなんだ」