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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

02 こけ猿の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 241,861 字 · 480 页

青空文庫

「ウヌ……!」

と源三郎、うなりながら、刀をひきおろしてみた。

刻一刻、重味の加わるような気のするその刀――。

「小細工を……」

剣林のまんなかですから、八方に気をくばりつつ、伊賀の若様、片手の指をその刀身に触らせて調べてみると!

「ナ、なんだ、これあ※(感嘆符疑問符、1-8-78)」

べっとりと冷たく濡れたものが、刃をつつむようにからみついて、キリキリと締めつけている。

除ろうとしても、急にはなれやしない。

「真綿でござるよ、アハハハハハ」

かたすみから、笑みをふくんだ峰丹波の声が流れて、

「濡らした真綿――オイソレとは取れぬもの。まず、そのお刀はお捨てめされ!」

まったく。

ドブリと水に漬けた、ほそ長い真綿なのだ。あつかうには、特別の術と習練を要する。水をふくませた真綿を、たくみに投げて、敵の刀を捲きつかせれば、適度な重味をあたえられた真綿のきれは、それ自らの力で小蛇のごとく、グルグルッとたちまち刀身ぜんたいにからみついて、水で貼りつき、綿でもつれて、ちっとやそっとのことでは取ろうたってとれない。

どんな利刃も、即座に蒲団を被て、人を斬るどころか、これじゃあ丸太ン棒よりも始末がわるい。