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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

02 こけ猿の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 241,861 字 · 480 页

青空文庫

この、消え失せたこけ猿の茶壺――耳が一つ虧けているので、耳こけ猿、こけ猿という……この壺の秘密をめぐる葛藤が、本講談の中心でございます。

さて。

話はここで、お濠の水しずかな千代田の城中、奥深く移って。

将軍八代様のお湯殿。八畳の高麗縁につづいて、八畳のお板の間、御紋散らしの塗り桶を前に、お流し場の金蒔絵の腰かけに、端然とひかえておいでになるのが、後に有徳院殿と申しあげた吉宗公で。

来年は、二十年目ごとの、日光御廟御修営の年に当たる。ひそかに軍用金でもためこんでいそうな雄藩を、日光東照宮修理奉行に命じて、その金をじゃんじゃん吐きださせようという、徳川の最高政策です。

どんな肥った藩でも、日光を一ぺんくうと、げっそり痩せると言われた。

「のう、愚楽。来年の日光だが、こんどは誰にもっていったものかな?」

吉宗公、お風呂番に相談している。そもそも、こいつをただの男とおもうと、大間違いなので……。

金ピカ日光(発端篇)

亀背で小男の愚楽老人、この上様のお風呂番は、垢すり旗下と呼ばれて、たいへんな学者で、かつ人格者だった。

将軍の垢はするが、胡麻は摺らない。